「新聞広告の日」記念特集

新聞に掲載される広告は、私たちの暮らしに彩りや刺激をもたらす情報源といえます。広告を制作するときに「生活感覚を大事にしている」というコピーライターの国井美果さんに、日々の情報の一つとして届けられる新聞広告の特徴や役割について聞きました。【明珍美紀】

  メディア多様化の中、役割は コピーライター・国井美果さんに聞く

――数あるメディアのなかで新聞の特徴は。
新聞は「信頼のメディア」といわれてきました。新聞は「意見を問われるメディア」ともいえます。思うに、新聞社にはそれぞれ「人格」があって、各新聞社が日々のニュースに関して社説などで考えを表明している。同時に掲載される広告も、いまの社会のありようについて企業側の姿勢や意見が問われている。広告のつくり手である私たちも身が引き締まる思いです。
――思い出深い新聞広告は。
自分が新人のころに担当したものですね。百貨店の15段の全面広告でした。新聞広告を任されるということは、一人前になるための一歩を踏み出すこと。その広告が掲載された日、電車に乗っていたら、目の前の男性が広げていた新聞に、自分がつくった広告が載っていたのです。「こうして人々のなかに広告が入るのか」「この広告がその人の行動を変えるかもしれない」。そう思ったら、とてもうれしく、緊張したのを覚えています。
――振り返れば戦時中も新聞は発行され、広告も出ていました。毎日広告デザイン賞の戦中の入賞作には「一粒の米か飛行機一台か」といったキャッチコピーがありました。
まさに広告は「時代の映し鏡」。その時代を生きた人の切実な思いも記録されています。
――広告をつくるときに心がけていることは。
企業の声に限界まで耳を傾け、企業が言いたくてたまらないことが、世の中の人にとって、言われたかったことになるように言い換えていく。受け取る側が「それを言ってほしかった」という言葉に変換すると、企業が届けたいことが、人々にとって必要になる。
――それを探るためには。
生活感覚ですかね。私は一人の生活者としては生活を楽しんでいる方ですが、要はこの世に生きるバランス感ではないでしょうか。もう一つ、世のさまざまな社会課題に関してついステレオタイプになりがちな自分の考えを、一歩引いた目で見つめることも大切だと感じます。
――メディアが多様化しています。
ネット広告も増えています。とはいえ、企業の思いを伝えるときに、あえて新聞だけを選ぶケースがあり、私自身は「新聞広告を打つ」ときの意味や重さを感じています。新聞は人が手にする媒体としては格段に大きく手触りがあり、ダイナミックな表現ができるので、広告をつくる醍醐味(だいごみ)がある。また、新聞の活字の海の中で「目と目が合ったね」という感じで、突き出しのような小さな広告に出合う瞬間があります。
一方で、新聞など活字メディアの「デジタル連携」が進んでいます。たとえば、気に入った新聞広告を目にしたら、メールなどで友人や家族に知らせたり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通じて拡散されたりする。QRコードを撮ると、スマホの画面に映像が映し出されるものもあります。
――今年から毎日広告デザイン賞の審査員ですね。
どのような作品が寄せられるか、いまから楽しみにしています。
広告には、人の気持ちや行動を変える力があると思います。それは私がこの道を選んだ理由でもある。応募してくださる方には、自由な発想で創作してほしいですね。
私自身、「その手があったか」というような、ダイヤの原石のようなアイデアに出合いたい、とひそかに思っています。
国井 美果 くにい・みか
1971年東京生まれ。立教大卒。広告制作会社「ライトパブリシティ」を経て独立。資生堂の「一瞬も一生も美しく」、キリンホールディングスの「よろこびがつなぐ世界へ」などのコーポレートメッセージをはじめキャンペーンコピー、テレビCMなど社内外をつなぐさまざまな言葉やアイデアで企業活動に関わる。
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