
1955年に毎日産業デザイン賞として創設され、デザインの多様化を背景に76年に毎日デザイン賞と名称を変更した後も我が国のデザインの活性化とともに歩み続けています。国際的、文化的な賞として高い評価を受けています。
新着情報
2017毎日デザイン賞の受賞者が決定しました。(2018.3.6) New!!
2017毎日デザイン賞


井上嗣也(いのうえ つぐや)
1947年生まれ。78年ビーンズ設立。アートディレクター、グラフィックデザイナー。広告、音楽、出版、テレビなどのアートディレクション。写真とタイポグラフィーの斬新なデザインワークでジャンルを横断した仕事を続けている。日本プロ野球シンボルマーク制作。東京ADCグランプリ、東京TDCグランプリ、日本宣伝賞山名賞。

PARCO“SHIBUYA,LastDance_”2016年 AD.D 井上嗣也 P 塚本勝巳・
東京大学大気海洋研究所 PL 高橋賢太郎・梶原毅 ADV パルコミュージアム
◆選評
現在、先鋭的なデザインといえば、多くの人がコンピューターによる新しくてスマートなテクノロジーを想像してしまうだろう。それに対して、井上嗣也のデザイン表現は、一貫して原始的であり、暴力的だ。井上の作品を特徴づけるものに写真表現があるが、「コムデギャルソンの洗濯バサミを集める鳥」や、「パルコの水しぶきを上げる猿」など、どの作品も井上ならではの見たてによる写真であり、いわゆる写真家の作品ではない。しかし、そのどれもが見る人の感覚をざわつかせてやまない。
井上は流行も、論理も全く知らないとウソぶきながら、常にトップモードであり続けている。その生理に訴えかける作品群は唯一無二であり、まぎれもなく現代において、より先鋭的な表現となりえているのではないか。
先鋭的とは、物の先がとがって、するどいこと。井上嗣也以外にこの言葉にふさわしいアートディレクターを見たことがない。
大貫卓也 アートディレクター


西沢立衛(にしざわ りゅうえ)
1966年生まれ。建築家、横浜国立大大学院建築都市スクールY-GSA教授。95年に妹島和世と共にSANAA、97年に西沢立衛建築設計事務所を設立。主な作品に金沢21世紀美術館、ローレックス・ラーニングセンター(SANAA名義)、森山邸、軽井沢千住博美術館、豊島美術館(西沢名義)。日本建築学会賞、プリツカー賞。
豊島美術館(建築・西沢立衛、アート・内藤礼)写真・鈴木研一
◆選評
西沢立衛氏は妹島和世氏とSANAAとして旺盛に活躍すると共に個人としても活動している。その作品は一見すると伝統的な建築的文脈からは外れているかに見えたりもする。しかしそれらを注意深く見ていくと、SANAAとしての作品と個人の作品は重なって見えるものの、個人名義での作品はより建築という概念の新しい展開可能性の模索という側面を強く感じる。例えば、森山邸での接地するボックスの分散配置、その展開とも読める青森の十和田市現代美術館、地上に置かれたゆがんだ球体のような豊島美術館など、それらの作品群は見た目の形状に統一的な個性があるといった紋切り型ではなく、作品の有り様はそれぞれ全く異なっているものの、ギリシャ以来の「地上に置かれた水平床―柱―屋根こそが建築である」という伝統的な建築という概念からは遠いところを目指している。言い換えると、屋根とそれを支える構造や、あるいは水平床=主階であるといった定型的な表現を持たない森山邸や豊島美術館は建築という概念そのものへの果敢な挑戦であると言えるのだ。そうした建築への挑戦を一貫して続けてきた一連の建築作品は目指すべき価値観を失ったかに思える現代という時代相の中で極めて意味深いと考える。
岸 和郎 建築家
2017毎日デザイン賞・特別賞


藤塚光政(ふじつか みつまさ)
1939年生まれ。東京写真短大卒業後、月刊「インテリア」で編集・写真を担当。「出雲大社・庁の舎」で写真家デビュー。65年に独立後、多くのデザイン誌や建築誌、一般誌で連載。87年日本インテリアデザイナー協会賞。近著に「日本木造遺産」(2014年、世界文化社)、「JAPAN'SWOODENHERITAGE」(17年、出版文化産業振興財団)。
藤塚光政「断崖の孤高、投入堂」(鳥取・三徳山三仏寺)
◆選評
建築家だったら自分のデザインした建物をこの人に撮ってもらいたいという願望があると思う。藤塚さんはそういった建築家たちに敬愛されている写真家である。みんな自分の作品を彼に撮ってもらいたいのだ。それは建築家が思い描いているその作品の肝となる部分やビューを彼が見逃さないということである。更に言えばその建物の魅力を見逃さず、建築家自身も気づかなかった部分でさえも引き出してくれるのである。
「日本木造遺産 千年の建築を旅する」は日本の伝統的な建築の名品やその細部の構造や装飾に宿る魅力を存分に撮りおろしている。その息をのむような美しさと迫力には圧倒される。そこに姿を現した美しい物体が持つ力強さや繊細さが余すことなく伝わってくる。建築家の藤森照信さんとの合作のこの本は、伝統的な建築物に宿る細部の妙技と時間と光の移り変わりによって立ち現れる建物の表情を捉えている。お二人の「ここを見てほしいんだよ」という声が聞こえてくる気がする。
藤塚さんは後世に伝えていく美、見逃してはいけないそのものの魅力を残していくことの使命を全うしている。毎日デザイン賞は敬意をもって彼の功績をたたえたい。
深澤直人 プロダクトデザイナー
選考要項
作品対象年度
作品対象
選考
表彰
選考日程
2017年11月24日(金) | 候補作品を調査委員によって選出 |
2018年1月30日(火) | 選考会開催 |
2018年3月6日(火) | 毎日新聞紙上に発表 |
選考委員(五十音順、敬称略)
大貫卓也 | アートディレクター |
岡﨑乾二郎 | 造形作家・批評家 |
岸 和郎 | 建築家 |
深澤直人 | プロダクトデザイナー |
面出 薫 | 照明デザイナー |
調査委員(五十音順、敬称略)
浅葉克己 | アートディレクター |
石上純也 | 建築家 |
葛西 薫 | アートディレクター |
柏木 博 | デザイン評論家 |
川上元美 | デザイナー |
川崎和男 | デザインディレクター |
河原敏文 | CGディレクター |
北山孝雄 | 北山創造研究所 |
木田拓也 | 武蔵野美術大学教授 |
操上和美 | 写真家 |
小泉 誠 | 家具デザイナー |
近藤康夫 | インテリアデザイナー |
佐藤可士和 | クリエイティブディレクター |
佐藤 卓 | グラフィックデザイナー |
柴田文江 | プロダクトデザイナー |
鈴木康広 | アーティスト |
須藤玲子 | テキスタイルデザイナー |
仙田 満 | 環境建築家 |
高島直之 | 美術評論家 |
内藤 廣 | 建築家、東京大学名誉教授 |
永井一史 | アートディレクター |
ナガオカケンメイ | デザイン活動家、D&DEPARTMENTディレクター |
新見 隆 | 武蔵野美術大学芸術文化学科教授 |
橋本優子 | 宇都宮美術館主任学芸員 |
長谷川逸子 | 建築家 |
服部一成 | アートディレクター |
浜野安宏 | 映画監督、ライフスタイル・プロデューサー |
原 研哉 | グラフィックデザイナー |
原 久子 | アートプロデューサー、大阪電気通信大学教授 |
廣村正彰 | グラフィックデザイナー |
藤井 保 | 写真家 |
藤崎圭一郎 | デザイン評論家 |
松永 真 | グラフィックデザイナー |
真鍋大度 | メディアアーティスト |
水戸岡鋭治 | デザイナー、イラストレーター |
皆川 明 | デザイナー |
三宅一生 | デザイナー |
森山明子 | 武蔵野美術大学デザイン情報学科教授 |
過年度受賞者一覧 ※1976年(昭和51年)名称変更(旧:毎日産業デザイン賞)
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