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WEB版 SPACE

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030号(2011年12月公開)

えらいすんまへん。
中島信也(なかじま・しんや)
CMディレクター。1959年福岡県生まれ。
(株)東北新社取締役。
1982年武蔵野美術大学視覚デザイン学科卒業、(株)東北新社入社、1983年TVCM演出家となる。武蔵野美術大学客員教授、宣伝会議コピーライター養成講座講師などを務める。
代表作にカンヌグランプリ「日清カップヌードル " h u n g r y ? "」、ACC賞グランプリ「サントリー 燃焼系アミノ式」、ADC賞グランプリ「サントリー伊右衛門」。
東京アートディレクターズクラブ会員。
「矢島美容室 THE MOVIE」監督。
 世界を震撼させた日清カップヌードル「hungry?」シリーズTVコマーシャル。この第一作め「マンモス篇」の準備が博報堂宮崎晋元帥率いるところの大貫卓也師のもとで着々と進められていました。究極の最高峰を求めてやまない大貫師による「世界一のマンモスを」との願いから遂行されることとなった「日米マンモス対決」。
 1990年晩秋の東京。机の上にならんだアメリカン・マンモスとジャパニーズ・マンモス。さあて大貫師のご決断はいかに、と衆目が固唾を飲んで見守る中、驚きの「動かしてみないとわからないね」発言!「動かしてみる」とおっしゃりましても電池を入れてスイッチひとつでじーこじーこ動くようなものではないのですこれ。動かないのですこれ。そりゃ動いたほうがどっちか決めやすいのはよーくわかりますけど、動かないのですこれ。
 「動かす」ためには「ストップモーション・アニメーション」つまり「コマ撮りアニメーション」以外方法はない。そうですね、科学技術が発達した現代であれば、コンピュータ上でシュミレーションさせることもできなくはないのでしょうが、時代はスピルバーグの「ジュラシックパーク」以前、CG技術はそこまでいってない。ムービーでの動きというのは1秒間に30枚の静止画が微妙にずれていくことによって動いて見えるのです。つまり30コマ撮ってやっと1秒。とはいえ3~4秒動いたところで大貫師は納得しないことは目に見えています。せいぜい10秒。10秒というと300コマのコマ撮り。
 簡単に「コマ撮り」と言いますが、スタジオも必要になる、ライトもカメラも必要になる、人形を動かす台も作らなくてはいけません。モノだけではありません。撮影・照明・美術スタッフ、そしてなによりもアニメーターも呼ばなくてはいけない。「10秒」と言いますが、撮影は10秒では絶対終わりません。急いでも丸一日作業です。こうなってくると人間ですから、お弁当も必要になるし、お茶だって飲みたくなる。それ「本番」やんか!
 ところが!この時点で「大貫さんそれ本番です無理です」とは誰も言い出さない。誰も止めない。なぜ止めないのか。大貫師が怖いわけではないんです。一種の集団熱狂陶酔状態に入ってしまっているんです。「世界一の作品にしたいよね!」大貫師のこの「よね!」が曲者なんです!「世界一の作品にしたいのだ!」ではなく「したいよね!」この「よね!」に魔力が潜んでいるんです。この「よね!」魔力こそ、大貫師の数多くの超絶スケールの偉業に隠された秘密だと僕は断言いたします。
 「世界一の作品にしたいよね!」と言われると、なんやしらんけど、そんなすばらしいことにこのぼくもわたしもかかわっているんや、というふうに思えはじめます。ぼくとわたしの中に眠っている根源的なパワーがこの「よね!」によって目覚めるのです。目覚めてしまったら最後、お金とか時間のことなんか忘れてしまう。全員がお金と時間を忘れてしまってごらんなさい皆さん、不可能なことなんてなくなってしまうんです!
 こうしてマンモスは何事もなかったように、日米両国で動き始めます。あ、「よね!」魔術に没頭してる間に字数が尽きました。日米決戦の結果はまたもや次号!です、えらいすんまへん!
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