一般公募・広告主課題の部

◇選評

「失っていくものが、次にみんなが欲しいもの。」

大貫卓也 アートディレクター


新聞はタッチパネルのようなスクロールもできないし、ズームもできない。大きな紙面でポケットにも入らない。めくると紙がガシャガシャと音をたてインキの匂いも鼻をつく。この愛すべき媒体のライブ感をつかむことがよい新聞広告を作るツボではないかと思う。今年はきれいごとではないアナログで温度感のある作品が多く集まった。新聞という大型サイズの紙に印刷された広告コミュニケーションに合理的な表現がふさわしくないことを誰もが感じ取っているのかもしれない。最高賞を獲得した森岡日菜子さん・田村波瑠子さん・太田亘九さんによる『日本公園緑地協会』の「そうぞうとあそぼう。」は、誰もが幼少時代は持っていたけれど、とっくの昔に失ってしまった自由な想像力を思い起こさせる。新聞を読む大人にとって多くのことを考えさせる作品として高い評価を得た。優秀賞・川﨑太呂さんの『三越伊勢丹』は土偶をモデルに見立てたユニークな表現でありながら、高級なモード表現になっていることが評価された。同じく優秀賞・山口敏生さんの『広辞苑』はストレートな商品広告。時代の変化に対応する広辞苑の存在意義をクールに表現したアイデア。もう一つの優秀賞は道路の打ち水に映り込んだ東京タワーでシズル感を表現した横澤武竜さんの『打ち水大作戦』。奨励賞は次の3作品。橋元風香さんの『全日本空輸』の「みんな正解のないことで悩んでいるんだ。」は観光地を光で表現することで旅のライブ感を伝える斬新な作品。藤田蓮さん・栗原莉梨花さん・小宮山太一さんによる『牛乳石鹼』のコピー「さわる子は、そだつ。」は失われていく大切なことを想起させる見事な切り口。市川雅一さんの『全日本空輸』の「遠くの今日へ」は海外と日本を対比させたユーモアあふれるアイデアがシニカルながら評価された。新聞広告は目立つだけでなく、読者にさまざまなことを考えさせる装置である。

一般公募・広告主課題の部 最高賞

AD:森岡日菜子(株式会社ADKクリエイティブ・ワン)
C:田村波瑠子(株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)
CD:太田亘九(株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ)

課題:日本公園緑地協会「公園の未来」 30段カラー2点シリーズ


一般公募・広告主課題の部 優秀賞

AD:川﨑太呂(多摩美術大学)

課題:三越伊勢丹「世界から見た伊勢丹/世界から見た三越」 15段カラー

C,D:山口敏生(株式会社日本デザインセンター)

課題:岩波書店「『広辞苑』」 10段6点シリーズ






AD,D:横澤武竜(株式会社電通)

課題:打ち水大作戦本部「打ち水ライフスタイル」 30段カラー2点シリーズ


一般公募・広告主課題の部 奨励賞

AD:橋元風香(金沢美術工芸大学)

課題:全日本空輸「自分らしい旅のスタイル」 30段カラー3点シリーズ



AD:藤田 蓮(株式会社博報堂)
C:栗原莉梨花(株式会社博報堂)
C:小宮山太一(株式会社博報堂)

課題:牛乳石鹼共進社「企業広告」 5段カラー6点シリーズ






C,D:市川雅一(株式会社大広)

課題:全日本空輸「自分らしい旅のスタイル」 30段カラー3点シリーズ



一般公募・広告主課題の部 学生賞

D:岡﨑一葉(金沢美術工芸大学)

課題:ヤマト運輸「カーボンニュートラル配送の『宅急便』」 30段カラー2点シリーズ


D:平田理華(岡山県立大学)

課題:集英社「集英社オレンジ文庫」 30段カラー3点シリーズ



D,C,I:井本愛莉(共立女子大学)

課題:彩きもの学院「自由」 15段カラー2点シリーズ


AD,D,I,C:川勝恵未(東京工芸大学)

課題:やおきん「うまい棒」 30段カラー

D:渡辺亜美(東京工芸大学)

課題:新潮社「新潮文庫」 30段カラー2点シリーズ


AD:河原英美(金沢美術工芸大学)

課題:全日本剣道道場連盟「『生涯剣道』」 15段カラー3点シリーズ



〇制作区分の略称表記は以下の通りです。
AD=アートディレクター C=コピーライター CD=クリエイティブディレクター D=デザイナー I=イラストレーター
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